浅草の喫茶店と探偵ミステリー~血に染まった赤いバラ~


あの誤解を招くようなやり取りに恥ずかしくなる。
 中から出てきた女子生徒だったが、前髪が長めで
ボブヘヤーのちょっと暗そうな感じの子だった。
 その子は、何も言わずに保健室から出て行ってしまった。

「岸谷じゃん。何?今頃まで寝ていたってわけ?
アイツ……何しに学校に来てるんだか。何様なわけ?」

「マジうざー」

 一緒に居た女子生徒達からブーイングが飛ぶ。
岸谷……?あ、そういえば出席簿に名前が。
 確か岸谷ほのかだったはず。
不登校で来たとしても保健室登校らしい。
 担任の水口先生もそれについてため息を吐きながら
悩んでいたっけ。

チラッと岸谷さんのことを発言した女子生徒達を見る。
 確か……この子達も同じ1組のカースト上級者の
堀内瑞穂と青木梨奈と林舞夏だったはずだ。
 なるほど。この子達のせいで不登校になったのか。
態度ですぐに分かる。イジメだろう。

学生のイジメは、昔から深刻化になっている。
 今は、ネットイジメややり方が変わりつつあるけど
大体何処も似たようなものだ。

 すると神崎って人がため息混じりに
「さて君らも早く戻りなさい。お弁当食べたのか?
まだなら、早くしないと昼休みが終わってしまうぞ」と言ってきた。

「あ、本当だ。ヤバい……早く食べないと」

「ちょっと保健室に寄るはずが。じゃあね神崎先生。
立花先生も」

 彼女達は、そう言いながら慌てて保健室から出て行った。
 何だか賑わしかったけど俺のことは、
ついでぽかったぞ。それよりも俺も早く戻ろう……。

この人のそばに居るのは、危険だ。
 また変な誤解をされたくないし、この人が
何を考えているのか全く分からない。
 それに胸がざわつくから嫌だ……。

「立花」

「はい」

 条件反射で返事をしてしまった。
それに何故だろうか。嬉しく思えた……。
 すると神崎って人は、クスッと笑う。
笑うと言っても切なそうにだが。