「からい…」

一口食べて鈴音は小さくつぶやく。

「そう?私からいの結構好きだし大丈夫。」

美里はけろっとしている。

凛先輩のことが気になりすぎて、考えなしに美里と同じにしてしまったことに後悔する。

(からいの苦手なのに…)

「あー、うちのカレーからいもんなー。持ってきたからてっきりからいの好きなのかと思った。」

瀬名先輩が言う。

「先に知りたかったです。その情報…」

鈴音が悔しそうに言うと瀬名先輩は俺も先に教えてあげたかった、と笑った。

「鈴音、無理せずに残したら?」

「でも、ご飯残すのは良くないし…」

食べ物を粗末にしてはいけないというのが花園家の教えだ。

「貸して」

横から凛先輩の手が伸びる。

「え?」

鈴音がきょとんとしていると

凛先輩は立ち上がり、新しいスプーンを持ってきた。

「残したくないんだろ?俺のまだ手つけてないし交換」

先輩がパスタとカレーを交換した。

「あ、…」

突然の出来事に思考が追い付かない。

凛先輩はだまってカレーを食べ始めた。

「凛ってからいのあんま好きじゃなかったくない?」

瀬名先輩が言う。

「ちょ、今それ言うなよ…」

心なしか凛先輩の耳が赤くなった。

「胸さわったお詫び。気にすんな」

凛先輩の手が鈴音の頭をくしゃっとなでる。

「え?胸?触ったの??」

驚いている瀬名先輩に説明するのも忘れて、鈴音はただ凛先輩を見つめる。

(何…これ…)

胸の奥がきゅーっとなるのを鈴音は感じた。