「眠い…」

昨日は全然寝れなかった。

あのことが頭から離れなくて…

昨日は恥ずかしさでいっぱいだったが、今日は違う。

力強い腕。

さらさらした髪。

そして、桜の下でみた時と同じ、綺麗な瞳。

胸が高鳴っているのがわかる。

「名前、知りたいな、」

鈴音はぽつりとつぶやいた。

「じゃあ、聞きに行く?」

横から美里の明るい声がする。

「え?むりむりむり」

鈴音は全力で首を振った。

「なんでー?」

「いや、普通に考えて無理だよ。全然仲良くもないし。」

「仲良くなるために聞きにいくんでしょー??」

「いや、向こうも急に来られたら困るよ。普通に無理だよ」

鈴音が弱弱しく言う。

何言ってんの!、と美里が言った。

「困らせればいいじゃん。普通?無理だよ。普通にしてたら恋は叶えられないよ。
ましてや、ゼロからのスタートじゃん?無理やりでも知ってもらわなきゃいつまでたっても始まらないよ!」

美里の言葉には説得力があった。

美里は恋をしているのだろうか。

「鈴音、もしかして、はじめて?」

「え?何が?」

「恋だよ、恋」

鈴音は小さくうなずく。

(これが、恋…)

改めて認識すると、なんだか体温が上がっていく気がした。

「わ!鈴音、真っ赤。かわいい。」

美里が微笑む。鈴音は顔を両手でおおった。