A.

「おいおい何初日から女子に見惚れてんだよ〜」

隣にいる和樹が僕をからかう。

でも和樹の言っている事は本当だった。今日は入学式。慣れないブレザーを着て電車に乗り込んだ。僕の乗った車両の1番後ろに彼女はいた。

綺麗な長い髪、透き通るような白い肌、全てを見通すような美しい眼…クサイ台詞を幾ら並べても全てを表す事が出来ないような美少女が、僕らと同じ学校の制服を着て電車に乗っていた。

君から目を離す事が出来なかった。

僕は、一目惚れというものをしたようだ。

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B.

ようやく彼が私に気づいたみたい。

彼を初めて知ったのは中学2年の夏。友達の付き添いで行ったサッカー部県大会予選の応援だった。その時の彼の姿はまるで背中に翼が生えたような…なんて、少しクサイかしら。その場にいた誰よりも輝いて見えた。

瞬間、私は彼に一目惚れをしてしまった。

この学校は私には少しレベルの高い所だったけど、彼が推薦で決まったと聞いたので頑張って勉強してなんとか入る事ができた。全ては彼の為だった。

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A.

入学式から暫く経った。

通学時、彼女は絶対に3両目の1番後ろに乗っていた。

同じクラスにはなれなかったし、学校で関わる事はなかったけれどこうして毎朝彼女の姿が見れるだけで幸せだった。

あれ?今一瞬目が合わなかった?…気のせいだ。そんな都合の良い事あるわけがない。

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B.
入学式から暫く経った。

通学時、彼は絶対に3両目の真ん中に友達と乗ってくる。

同じクラスにはなれなかったし、学校で関わる事は無い。サッカー部のマネージャーにでもなろうかしら…なんて考えたけど私は体力にからきし自信がないので諦めた。

こうして毎朝彼の姿が見れるだけで幸せだった。

…あれ?今一瞬目が合わなかった?…気のせいね。そんな都合の良い事あるわけない。

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A.

夏が近づいていた。部活三昧の毎日。彼女とは未だに一言も会話した事が無かった。

…正直言って夏までには仲良くなって、たとえ付き合えなくてもデートに行ったり一緒に勉強したり夏祭りに行ったり…そんな事を考えていた。

彼女への想いは日に日に増していった。彼女と話してみたい…。
よし!今日こそ!この想いを伝えよう!…は無理だとしてもLINEくらい聞く努力はしてみよう…。

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B.

夏が近づいていた。部活で忙しい彼とは未だに一言も会話した事が無かった。

彼の姿を見れているだけで幸せ…なんて考えてたけどそれももう限界!!

彼への想いは日に日に増していった。朝、姿見の前で身嗜みをこれでもか!と言うほど整えた私は決意した。

今日こそこの想いを伝えよう。

大丈夫、大丈夫だ。恋する女の子は皆可愛いんだから。

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A.

雨が降っていた。今日に限って彼女の姿はどこにも見当たらなかった。


もう帰ってしまったのだろうか…?玄関先で彼女を待っていると不意に声を掛けられた。

「久し振り!何してるの?」

「君は…?そうだ。和樹の彼女だったっけ?人を待ってるんだけど、中々来ないから帰ろうと思ってたんだよね」

「そうなんだ!丁度良かった!途中まで傘に入れてくれない?和樹に頼もうと思ってたんだけど、用事があるから先に帰ってくれって言われちゃってさ。」

「和樹、時期エース候補とか言われてるし忙しいんだろうな。いいよ。」

了承はしたものの、人の彼女とはいえ女の子と相合い傘をしてる所を彼女に見られたら勘違いされるんじゃないか…?なんていらない心配をしていた。

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B.

私の恋は終わった。

彼には恋人がいるらしい。そりゃああれだけ素敵な人だもの。いても不思議じゃないわよね。


私の全てが無駄になってしまった。雨が降っているらしい。私にはそんな事、どうでもよかった。

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A.

和樹の彼女を送ってから駅へ向かっているとこの雨の中、傘も差さずに歩いている女の子がいた。

…彼女だ!!

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B.

「あの!すみません!…風邪引きますよ?」

声を掛けられた気がした。

なんだか見覚えのある人…あぁ…彼の友達の…名前なんだったっけな…

私は彼の友達という事以上に、この人の顔がなんだか見覚えのある気がしてならなかった。

この人の表情は私がさっきまで彼、和樹君に向けていた表情ととても似ていた。