あたしは浦野紗季(うらのさき)。友達からよく「お母さん」と言われるごく普通の高校生だと思う。

「よし、できた!」

日曜日のお昼、あたしはキッチンに立ってチャーハンを作っていた。出来上がったチャーハンと卵スープを手に、リビングの椅子に座る。

親は今旅行に行っていて、今日の夕方に帰ってくる。小学生の弟と妹はそれぞれ友達の家に遊びに行ったため、久しぶりに一人だ。

「さて、ドラマでも見ようかな〜」

あたしの好きな俳優が主演のドラマを再生する。いつもテレビは弟と妹に譲っているため、こういう時にのんびり見るしかない。それはそれで楽しいんだけど。

オープニングが終わった頃、あたしの家の呼び鈴が鳴り響く。宅配便かと思いあたしはドラマを止めて玄関に向かったけど、ドアを開けた瞬間に後悔することになった。

「紗季〜!うち今日誰もいないんだよね。暇だから遊びに来たよ〜」

Tシャツにダボッとしたラフな格好をした男子がドアを開けた瞬間に抱き付いてくる。ちなみに今日は今年最高気温だと天気予報で言われている。暑い!暑苦しい!

「陵!汗かくから抱き付くのやめろ!」

「んん〜、紗季は汗かいてもいい匂いだから気にしない!」