ホワイトデーには出かけてしまった。

彼の顔を見たかったけど恥ずかしかった。

「ただいまー」

帰ってきてから家にいた祖母に話しかける

「あ、愛ー、去年の優多くん…だっけ。
からチョコ…」

まだ祖母が言っているにもかかわらず、私は興奮して、「うん!ありがとう!」と言って部屋にかけ上った。

手紙が入っていた。

「チョコ下手になっちゃった」

そこから始まっていた。

1枚しか入ってなかったけど、嬉しい。

正直に書かれている手紙では無かったが、実に彼らしいなと思った。

「手紙ありがとう、嬉しかった。」

そう、書かれていた。

涙が出てきた。

わたしは、彼が好きだ。

素直じゃない、でも、優しすぎる彼が。

       ♥

中学生になって、ある月曜日。

私達はもう半年話してなかった。

こう見えて真面目な私は、毎朝早く学校に着く。

今日も早く学校に行くと、誰もいなかった

(あれ、早すぎたかな)

いつも先輩達がいるのに、今日は居なかった。

いつもより10分早かったからかな。

そう思って、玄関の前まで歩いた。

すると、1人だけ、男子がたっていた。

(あれ、居るじゃん。誰だろ)

顔を確かめたくて近くに寄っていくと、

優多くんだった。

(えっ…)

「おはよ。」

どこか恥ずかしそうな顔で挨拶してくれた

返さなきゃ、と思って…

「っはよ…!」

声が裏返ってしまった。

(やだ!超恥ずかしい…)

顔が熱くてたまらない。彼から見た私の顔は、火傷したように真っ赤なのだろうか。

「今日早めに出ちゃったんだよね」

苦笑しながら話す彼に見とれていた。

「そ、そうなんだ」

(優多くんは恥ずかしくないのかな)

私だけなのかな、意識してるのは。

そんな気持ちが通り過ぎたけれど私達はいわゆる《カレカノ》だ。

そこら辺にいるリア充と一緒。

ただ、話す回数が少ないだけ。

(今までの5年間は、あんなに話したのに)

私の5年間の片想いは、彼の告白で両想いに変わった。

でも、5年間のうちに、話さなかった日は無かったはずだ。

なのに、今は一言出すだけで声が震えてしまう。

「いつもこんなに早いの?」

気付くとまた話しかけられている。

「えっ!?…あ、うん。いつもこんな感じ」

日本語が喋れているだろうか。

笑顔を作ることは出来ているだろうか。

「へぇ。早いね」

彼は笑ってくれた。5年間の片想いの時期と同じように。

「そうかな…」

照れ隠しに首に手をやった。

「うん、」

お互いに口を開こうとした時、

「おはよ〜!!」

先輩とクラスメイトが一気に来た。

「早いじゃぁん」

男子達は軽々と優多くんに話しかけている。

私もあんな風だったよな…

でも、茶化されなくて良かった。

彼にも悪い気がするし。

私も友達が来たから、優多くんとは離れた。

でも、最後に手を振ってくれた。

小さくだけれど、気持ちの籠った手を。

私は手を振る代わりに笑顔を返した。

周りの人にバレるから。