私は廊下側から3列目の1番後ろの席。



授業の途中でプリントが配られ、数枚余ったので教卓にいる瀬那先生に返しにいった。



「プリント余りました」



瀬那先生の顔を見てそう言ったのに、いざ目が合うと恥ずかしくなって反射的に視線を逸らしてしまった。



瀬那先生はプリントを受け取り、「ありがとう」と小さくつぶやく。



プリントを渡しにきただけなので、そのままもう自分の席に戻ろうとすると……。



「髪、短いのも似合うな」



瀬那先生に背中を向けかけたところで、私しか聞こえないくらいの声が聞こえた。



私には、はっきりと聞こえた。



瀬那先生の低く優しさが混じったその声、その言葉が……授業が終わるまで私の耳から離れることはなかった。