今日も、私は瀬那先生を誘惑します。



「私って料理できなさそうですか?」



私はなにごともなかったかのように、平然を装いながら背後にいる瀬那先生へと話しかけた。



「迷子になるくらいだから、ドジっ子なのかと思ってた。けど、これは将来いいお嫁さんになるな」



すぐ後ろから聞こえる瀬那先生の声。



……ドキドキ、ドキドキ。



いいお嫁さんになるって……そんな会って間もない先生に言われたところで、嬉しくなんか……ない。



……そんなはずなのに、自分の意思とは正反対に、どんどん鼓動の速さは速くなっていく。



「……いった……っ」



私は料理をしててほとんどケガをしたことがないのに、瀬那先生が現れてから手に力が入ってしまい、人差し指の先を少しだけ切ってしまった。