「今日はもう帰れ」と冷たく言い放つ俺に、泣きそうになるつむぎ。



これ以上今のつむぎといても、もっとひどいケンカになる予感しかしない。

……それに、今度こそ脱がれてしまったら、そのときは我慢できるか自分でもわからない。



とにかく俺は1人になって頭を冷やしたかった。



勢いよく家から出ていったつむぎ。

ガチャンッと……玄関のドアが閉まる大きな音がした。


まだ夕方になる前だし、1人で帰らせても安全だろう。


俺は玄関の鍵を閉めに行く。


……すると、つむぎが持ってきたはずの傘が傘立てに置かれたままだった。



慌ててドアを開け、外の様子を確認する。

つむぎの姿はもうない。

そして……どしゃ降りの雨と他の音をかき消すくらいの大きな雨音。



こんなどしゃ降りの中、傘もささずに帰ったのか……?

……って、完全に俺のせいだろ。

急いで帰らせたのは俺じゃねぇか。



やらせない気持ちに支配されそうになりながらも、俺は気づけば傘を2本手に持ち、アパートから飛び出していた……。