「違うよ。幸せよりも、勝る気持ちがあるんだよ」
「それってどういう気持ちですか……?」
私がそう聞くと、ニヤッと口角を上げた瀬那先生の顔が私に近づいた。
「言っていいの?」
嫌な予感がしてきた。
「つむぎと密着してたら……いたずらしたくなる」
いたずら好きな子どものようにそんなことを言う瀬那先生。
いたずらとは……なんて、聞かない。
鈍感な私も、瀬那先生と付き合っていくうちに、なんとなくわかるようになってきた。
「男の人って、大変ですね」
「ひとごとだね、つむぎちゃん」
私も余裕があるふりをしたくて、口から出た言葉だったのに……。
さらに、私の顔を覗き込んでくる瀬那先生の顔がかっこよすぎて……もう余裕のあるふりなんてしていられるはずがない。
「キスも、してほしいだろ?」
「……言わなくてもわかりますよね」
瀬那先生は「わかんない」と言いながら……私の唇に自分の唇を重ねた。



