車の中に戻ると……。
たまたま、前に止まっている車がその派手な男の子たちの車で、なんだかチラチラとこっちを見ている気がする。
でも、気のせいだろうな……。
そう思っていたら、瀬那先生が「呉羽」と優しく呼んだ。
瀬那先生の方を向いた瞬間、瀬那先生はいきなり顔を近づけてきた。
あと数センチで唇が触れる距離。
「ちょっ……いきなりなにするんですかっ⁉︎」
「牽制(けんせい)しといた」
「け、牽制?どういう意味ですか?」
「呉羽は俺の彼女だって、あいつらに見せつけたんだよ」
男の子たちが見ていたのって私だったの⁉︎
鈍感すぎて、まったく気づかなかった……。
男の子たちに、キスしてるように見せたってことだよね。
「まだあいつらが見てるから、もうちょっと激しいのしとく?」
意地悪そうに笑う瀬那先生。
少し楽しんでるように見える。
激しいのって、どんなキス……?
内心、興味が止まらないけど、そんなこと言えるはずない。
「いいから、もう行きますよっ!」
「えー……」
「はい、しゅっぱーつ!」
これ以上ここにいたら、瀬那先生の思い通りにされてしまいそうなので、私は強引に出発させた。



