「呉羽が赤点とるなんてなー?」



後ろから聞こえた声に反応して、勢いよく振り返ると、そこには瀬那先生がいた。



……私が瀬那先生のほっぺにキスをしたあの日以来、面と向かってしゃべっていなかった。



それに、瀬那先生への恋心に気づいてからの初瀬那先生。



だからか、今ものすごく緊張してる。



「昔から数学が苦手で……」

「そうなんだな。じゃあ、この期に数学のこと好きにさせるな」

「……よろしくお願いします」



好きにさせるって……っ。

数学のことだってわかっているけど、瀬那先生の口からそういう言葉を聞くとつい反応しちゃう。



それにしても、あの日のことはなにもなかったかのようにいつも通りに振る舞う瀬那先生に、少し傷ついた。



所詮、私はただの生徒だもん……。

こんなことで落ち込んでたら、身がもたない。