「いーんちょ」 背後から声が聞こえた後、ポン、と頭に何かが触れた。 振り返ると、 アッシュブラウンの髪を揺らしている、クラスメイトの志木(しき)楸(ひさぎ)くんが、ノートをわたしの頭に乗せていた。 「提出、遅いです…」 「すんません」 謝罪の言葉は軽く、棒読みな感じ。 もうみんなの分は集めて先生に出しに行った後だよ。 みんなは帰って、職員室から空っぽの教室に帰ってきたら、これだ。 楸くんは、わたしに嫌がらせをしているのかな? 「もう自分で出してください…」 「んー、まぁ、それがいっか」