「杏菜、朝ご飯できたよ〜」

「あ、ありがとうございます……」

ニコニコするリオン・スズキ・トリクシィとは対照的に、北山杏菜(きたやまあんな)はどこか戸惑った様子だった。

杏菜はリオンの兄であり、クラリネッタ王国の次期国王であるダミアンに誘拐されていた。しかし今、日本にある別荘にリオンに連れ去られている状態だ。

「早く来て?ご飯、冷めちゃう」

杏菜の手がグイッと引かれる。リオンに手を引かれたまま杏菜はリビングへと入った。広々としたリビングには、おしゃれな暖炉が置かれ、大きなソファやアンティーク調の時計がある。そして窓の外には美しい山が見えていた。

「フフッ。いいところでしょ?あの王宮だと息詰まっちゃう」

景色に見とれる杏菜にリオンは嬉しそうに言い、椅子に杏菜を座らせる。杏菜の目の前には、カフェのモーニングで登場しそうなモンティクリストにコールスローサラダ、それにスープもある。

「これ、全部リオン様が作ったんですか?」