「陽菜ちゃん、少し落ちつこう 」


いったん注射器を、銀色のトレーに戻して

抱っこして背中を擦ってくれた。


看護師さんとか呼んで私のことを抑えててもらえば

採血なんて簡単にできるのに。



こんなに優しくされると

罪悪感が出てきてしまう。


「ごめんなさいっ 」


「陽菜ちゃんは悪いことしてないから謝らないでね。
でも、俺の話少し聞いて? 」


「…うん 」


ワガママばっかり言っているから、せめて話くらいは聞かないと…


「俺も怖い気持ちよく分かるから、なるべく患者さんに痛い思いさせないようにたくさん注射も採血も練習した。
だから、失敗だけはしないって約束するから少し頑張れないかな?」


翔馬先生は私の腕のあざを見たから、異常なほど怖がる理由をわかってくれて、無理矢理抑えつけようとしなかったんだ。


何を言われようと。

怖いなんて気持ちは簡単になくならない


でも、少しだけ、頑張ろう、

翔馬先生を信用しようって思ってしまう。