「前に 明日香 ” どうして私を選んだの? ” って 聞いたことがあったでしょう?」

「悠樹さん いつも はぐらかすんだもの。」


「明日香 まだ入社したばっかりの時、俺のお客さんに お茶を持って来てくれたじゃない?何回か。その時 それまでの女子社員と 違う感じがしたんだ。」


「違う感じ?」

「そう。明日香の態度って すごく控え目で。自分の存在感を消して。裏方に徹していて。自己顕示欲が強い子が 多い中で すごく新鮮だったんだ。」

「そんな… 私 全然 覚えてないわ。意識して そうしていたわけじゃ ないと思うの。」


「そうだよ。明日香って そういう性格なんだよ。いつも控え目で。回りのために 自分ができることを 一生懸命 頑張ってくれて。」

「ううん。何もできないから。自分に自信がないだけよ。いつも。」

「明日香のこと 気になって。こっそり 仕事中の明日香を 見るようになって。明日香 備品の補充とか 目立たないことを いつもやっていたよね。みんなが 仕事しやすいように。いつも 気を配っていて。すごく良い子だって 思ったんだ。」

「そうだったかしら。私 たいした仕事 できないから。少しでも みんなの役に立ちたかっただけなの。」

「すごく明日香が 気になって。付き合い始めたら 明日香 思った以上に 思いやりがあって。いつも 俺のこと 一番に考えてくれて。俺 明日香しかいないって思った。ずっと明日香と 一緒にいたいって思ったんだ。」


「すごく嬉しい。悠樹さんが そんな風に 思っていてくれたなんて。」


「明日香 いつも自信がないって 言っていたけど。もっと 自信持っていいんだよ。明日香には すごい能力があるんだから。回りを全部 見回して みんなのことを 考えて行動できるって みんなが できることじゃないからね。」

「ありがとう。そんなに褒められると ちょっと恥ずかしいわ。」


「俺 明日香が モデルの友梨さんと 仲良くしていることも すごいって思っているんだ。」

「えっ?友梨さんと?」

「そう。友梨さんみたいな業界の人って すごく警戒心が強いのに。明日香は 昔からの友達みたいに 友梨さんと 親しくしているでしょう?」

「私 友梨さんには 色々 助けてもらっているのよ。」

「友梨さんは 明日香のこと 本当に 信用しているんだよ。でなければ 出産の時 知り合った人と 仲良くなんか できないよ。」

「それは 私が 柴本HDの嫁だからよ。」

「うん。でも それだけじゃないよ。明日香の思いやりが ちゃんと友梨さんに伝わっているんだよ。明日香… 明日香は 俺の 自慢の奥さんだよ。」


いつも以上に 饒舌な悠樹は

きっと お義母様の容態に 安心したから。


悠樹の留守を 私が しっかり守れたから。


これからは もっと悠樹を 安心させられるように

柴本家の嫁として 社長の妻としての 自覚を持とう。


みんなが 大丈夫って 言ってくれたから。