手早く 家事を片付けて 美容室に向かう。


淡いクリーム色の フォクシーのワンピースに

バッグとパンプスは フェラガモを合わせて。


「こんにちは。よろしくお願いします。」

「柴本様。お待ちしておりました。」

いつも 私を担当してくれる 大野さんは

30代後半の ベテラン美容師。


「今日は どのように いたしますか?」

「これから ランチに出かけるので。そういう雰囲気で お願いします。」


私の曖昧な 要求を 大野さんは いつも理解してくれる。

「かしこまりました。」


シャンプーをされて 鏡の前に 座ると

大野さんは 手際よく 髪をセットする。


「毛先を 少しだけ巻いてみますね。」

「はい。」

肩にかかる 私の髪は ゆるく巻いただけで

ぐっと華やかな 雰囲気になって。


「わぁ。なんか 感じが変わりますね。」

「はい。柴本様の 清楚さが 引き立ちます。」

「清楚だなんて…子供もいるのに。」

「いえ。柴本様は 素肌も綺麗ですし。お顔立ちが 上品なので とても清楚ですよ。」

「そんな…恥ずかしいです。私 地味なだけなのに。」

「そんなこと ありませんよ。美しい方は 地味にしていても 透明感が 際立ちますから。」

「そんなに 褒めて頂いたら 毎日 来てしまうわ。」

「どうぞ。いつでも お待ちしています。」


大野さんと 笑い合って。

私の心は 浮かれていた。


髪を セットした後で メイクをしてもらうと

鏡の中の私は いつもより 垢抜けて。


これなら 悠樹に 恥をかかせない…


久しぶりの 外食だから。

たとえ ランチでも。


私は 悠樹に 喜んでもらいたかった。