ヘアオイルを髪に塗り込んで、ドライヤーでサラサラに乾かしていく。
それが終わったらパックを剥がして、仕上げにクリームを頬に塗っていく。
プルンプルンになったら、出来上がりだ。
そのままリビングに直行して、牛乳とお菓子を台所から拝借してくる。
これで準備万端なので、夏くんにライン。
[お風呂から上がったよ〜!]
わずか数秒後に既読がついて返信がくる。
[やった〜〜〜!!じゃあ早速やろう。]
その一秒後に夏くんからの着信があった。
緊張を紛らわすために、サクサクのチョコ味のビスケットを口の中に入れてから、通話に出る。
「やっほー。元気にしてる〜?」
ニコニコと満面の笑顔の夏くんが手を振っていた。
私は口元を手で隠して、もぐもぐしながら頷く。
「ねぇ、待って。何か食べてるでしょ(笑)」
このままだと喋れないので、コップに注いだ牛乳で口の中のビスケットを流し込んだ。
「ぷはっ。久しぶりだね、夏くん。」
緊張しすぎて、さっき会ったばかりだけれど何故かそんなセリフが口から出てくる。
思わず顔がニヤけるのを必死に堪えながら、夏くんに手を振り返した。
「うん。久しぶり。何食べてるの?」
「これはね、チョコ味のビスケット。」
「おやつ?見てたらお腹減ってくる(笑)」
「夏くんも食べたいなら、あげてもいーよ。はいどーぞ。あーーん。」
冗談まじりで、ビスケットをスマホに近づけていく。
「あーーん、、。いや、画面越しだから俺は食えないし、画面がほとんどビスケットしか写ってないんだけど(笑)」
そしてそのまま、自分の口に近づけてパクリ。
「うん。美味しい〜!」
こうゆうのって、カップルみたいで楽しい。
まぁ、出来たてホヤホヤのカップルだけど。
「えっ、俺にくれないの?泣くよ、俺?」
「だってこれライン通話だから、夏くんは食べれないでしょ?」
「ねぇ、もう一回やってよ。今の。」
「え〜やだよー(笑)二回もやるの恥ずかしいから、普通に食べたいもん(笑)」
「あ〜、、、、(笑)そんなことされたら、本当にお腹減ってきちゃうじゃん(笑)」
「そろそろ、夕ご飯だもんね。」
「雪は、この後何かする予定ある?」
「まだね〜、宿題が終わってないからこれからやるよ。」
「夏休みの宿題がでたらさ、俺の家で一緒にやらない?二人で頑張ろうよ。」
「えっ、夏くんの家でやるの!?」
「うん。いつでもいいけど、いつにする?」
「え〜、どうしよう(笑)」
「俺の家は、だいたい昼間は親が居ないから午前9時から午後6時ぐらいまでは、一緒に勉強したり出来ると思うよ。」
その間、ずっと、夏くんと二人っきり。
「じゃあ、終業式の日がいいなぁ。」
なるべく早く、善は急げって言うよね。
「なら一緒に帰ってさ、制服姿のまま俺の家においでよ。家まで案内するからさ。」
「うん。お昼ごはんはどうする?」
「簡単なメニューで良ければ、俺作るよ?」
「夏くんって、料理出来たの、、、?」
私なんて、ホットケーキしか作れないのに。
「ちょっとだけだけど(笑)でもまぁ一応、得意料理なら失敗しない自信はあるかな?」
「え〜、野球少年だと思ってたのに、私よりも女子力高いなんて聞いてないよ!?」
詐欺だ。これは詐欺だ。警察に通報しよう。
「いやいや、そんなこと無いから(笑)」
「え〜、本当に〜?」
あからさまに不満そうな顔で頬っぺたを膨らませてみるけど、思わず笑いそうになってしまう。
「お昼ごはん、作って欲しくないの?(笑)」
夏くんも、半笑いを浮かべていた。
「それは、凄く嬉しいんだけど、、なんか凄ーく負けた気分、、(笑)」
我ながら情けないなぁと、思ってしまう。
「安心して。美味しいのは保証するから。」
そう言って、夏くんはにっこりと自信ありげに微笑んだ。
そんな顔されたら、もう何も言えない。
「じゃあ、期待して、待ってるからね?」
自分からハードルを上げていく夏くん。
よっぽど美味しいに違いない。
「うん。楽しみにしててよ。それ食べて、勉強頑張ろうな。」
そう言って、今度は優しい表情で夏くんは笑った。
「うん。、、、ありがとう。」
壁に掛けてある時計の針は、丁度午後6時を指そうとしていた。
「勉強が終わったら、二人で何処に行きたいなー。遊園地デートとか、定番だけど夏くんと一緒なら楽しそうだし。」
ほんのりと、自分の願望を夏くんに伝える。
「ね。俺も行きたい(笑)その日は、独り占めにしちゃうから、ちゃんと心の準備してから来てね?」
「えっ、、そうなの!?」
「他の誰かに渡すつもりないから、覚悟しといて(笑)」
「え〜、、全然想像つかないかも。」
だってそもそも、デートなんてした事がない訳で。
いきなりそんなこと言われても、反応に困る。
ていうか、心臓に悪い。
「じゃあ、終業式の日は俺の家に来てね。」
「うん。私もそろそろ宿題やらなきゃ。」
「じゃあ、、バイバイ(笑)」
「うん、、またね〜(笑)」
お互いに笑顔で手を振った後、ようやく会話が途切れた。
一人でぬるくなった牛乳と、早くも湿気ったビスケットを胃の中に流し込む。
(終業式かぁ、、、、。)
冷静になって考えてみれば、夏休みが始まるまであと一週間もないことに気付く。
その事実が、なんだかやけに遠くて非現実的なものに思えた。
「青春って、なんだろう。」
ふと、またいつもの疑問が胸に浮かんで。
その答えを探すものの、全然見つからなくて。
今日も私は青春を知らないまま背伸びして青春なんて嫌いって興味がないフリをした。
欲しいものが手に入らなかったとき、傷ついてしまうからわざとそうした。
期待して裏切られるのは辛いから、だったら最初から青春なんて要らない。
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、退屈だったはずの日常はいつの間にか、知らない景色に塗り替えられていく。
いつかは、見慣れてしまうものなのかな。
夏くんの顔も、声も、仕草も、笑顔も。
あるいは、懐かしく思い出すのだろうか。
今年の中学生になったばかりの夏休みを。
いつかーーー。
この始まったばかりの二人の恋の行く末なんてまだ誰も知る由がなくて、私は本当に何も知らなかったんだ。
この後、まさかあんな事態になるなんて、、、。
それが終わったらパックを剥がして、仕上げにクリームを頬に塗っていく。
プルンプルンになったら、出来上がりだ。
そのままリビングに直行して、牛乳とお菓子を台所から拝借してくる。
これで準備万端なので、夏くんにライン。
[お風呂から上がったよ〜!]
わずか数秒後に既読がついて返信がくる。
[やった〜〜〜!!じゃあ早速やろう。]
その一秒後に夏くんからの着信があった。
緊張を紛らわすために、サクサクのチョコ味のビスケットを口の中に入れてから、通話に出る。
「やっほー。元気にしてる〜?」
ニコニコと満面の笑顔の夏くんが手を振っていた。
私は口元を手で隠して、もぐもぐしながら頷く。
「ねぇ、待って。何か食べてるでしょ(笑)」
このままだと喋れないので、コップに注いだ牛乳で口の中のビスケットを流し込んだ。
「ぷはっ。久しぶりだね、夏くん。」
緊張しすぎて、さっき会ったばかりだけれど何故かそんなセリフが口から出てくる。
思わず顔がニヤけるのを必死に堪えながら、夏くんに手を振り返した。
「うん。久しぶり。何食べてるの?」
「これはね、チョコ味のビスケット。」
「おやつ?見てたらお腹減ってくる(笑)」
「夏くんも食べたいなら、あげてもいーよ。はいどーぞ。あーーん。」
冗談まじりで、ビスケットをスマホに近づけていく。
「あーーん、、。いや、画面越しだから俺は食えないし、画面がほとんどビスケットしか写ってないんだけど(笑)」
そしてそのまま、自分の口に近づけてパクリ。
「うん。美味しい〜!」
こうゆうのって、カップルみたいで楽しい。
まぁ、出来たてホヤホヤのカップルだけど。
「えっ、俺にくれないの?泣くよ、俺?」
「だってこれライン通話だから、夏くんは食べれないでしょ?」
「ねぇ、もう一回やってよ。今の。」
「え〜やだよー(笑)二回もやるの恥ずかしいから、普通に食べたいもん(笑)」
「あ〜、、、、(笑)そんなことされたら、本当にお腹減ってきちゃうじゃん(笑)」
「そろそろ、夕ご飯だもんね。」
「雪は、この後何かする予定ある?」
「まだね〜、宿題が終わってないからこれからやるよ。」
「夏休みの宿題がでたらさ、俺の家で一緒にやらない?二人で頑張ろうよ。」
「えっ、夏くんの家でやるの!?」
「うん。いつでもいいけど、いつにする?」
「え〜、どうしよう(笑)」
「俺の家は、だいたい昼間は親が居ないから午前9時から午後6時ぐらいまでは、一緒に勉強したり出来ると思うよ。」
その間、ずっと、夏くんと二人っきり。
「じゃあ、終業式の日がいいなぁ。」
なるべく早く、善は急げって言うよね。
「なら一緒に帰ってさ、制服姿のまま俺の家においでよ。家まで案内するからさ。」
「うん。お昼ごはんはどうする?」
「簡単なメニューで良ければ、俺作るよ?」
「夏くんって、料理出来たの、、、?」
私なんて、ホットケーキしか作れないのに。
「ちょっとだけだけど(笑)でもまぁ一応、得意料理なら失敗しない自信はあるかな?」
「え〜、野球少年だと思ってたのに、私よりも女子力高いなんて聞いてないよ!?」
詐欺だ。これは詐欺だ。警察に通報しよう。
「いやいや、そんなこと無いから(笑)」
「え〜、本当に〜?」
あからさまに不満そうな顔で頬っぺたを膨らませてみるけど、思わず笑いそうになってしまう。
「お昼ごはん、作って欲しくないの?(笑)」
夏くんも、半笑いを浮かべていた。
「それは、凄く嬉しいんだけど、、なんか凄ーく負けた気分、、(笑)」
我ながら情けないなぁと、思ってしまう。
「安心して。美味しいのは保証するから。」
そう言って、夏くんはにっこりと自信ありげに微笑んだ。
そんな顔されたら、もう何も言えない。
「じゃあ、期待して、待ってるからね?」
自分からハードルを上げていく夏くん。
よっぽど美味しいに違いない。
「うん。楽しみにしててよ。それ食べて、勉強頑張ろうな。」
そう言って、今度は優しい表情で夏くんは笑った。
「うん。、、、ありがとう。」
壁に掛けてある時計の針は、丁度午後6時を指そうとしていた。
「勉強が終わったら、二人で何処に行きたいなー。遊園地デートとか、定番だけど夏くんと一緒なら楽しそうだし。」
ほんのりと、自分の願望を夏くんに伝える。
「ね。俺も行きたい(笑)その日は、独り占めにしちゃうから、ちゃんと心の準備してから来てね?」
「えっ、、そうなの!?」
「他の誰かに渡すつもりないから、覚悟しといて(笑)」
「え〜、、全然想像つかないかも。」
だってそもそも、デートなんてした事がない訳で。
いきなりそんなこと言われても、反応に困る。
ていうか、心臓に悪い。
「じゃあ、終業式の日は俺の家に来てね。」
「うん。私もそろそろ宿題やらなきゃ。」
「じゃあ、、バイバイ(笑)」
「うん、、またね〜(笑)」
お互いに笑顔で手を振った後、ようやく会話が途切れた。
一人でぬるくなった牛乳と、早くも湿気ったビスケットを胃の中に流し込む。
(終業式かぁ、、、、。)
冷静になって考えてみれば、夏休みが始まるまであと一週間もないことに気付く。
その事実が、なんだかやけに遠くて非現実的なものに思えた。
「青春って、なんだろう。」
ふと、またいつもの疑問が胸に浮かんで。
その答えを探すものの、全然見つからなくて。
今日も私は青春を知らないまま背伸びして青春なんて嫌いって興味がないフリをした。
欲しいものが手に入らなかったとき、傷ついてしまうからわざとそうした。
期待して裏切られるのは辛いから、だったら最初から青春なんて要らない。
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、退屈だったはずの日常はいつの間にか、知らない景色に塗り替えられていく。
いつかは、見慣れてしまうものなのかな。
夏くんの顔も、声も、仕草も、笑顔も。
あるいは、懐かしく思い出すのだろうか。
今年の中学生になったばかりの夏休みを。
いつかーーー。
この始まったばかりの二人の恋の行く末なんてまだ誰も知る由がなくて、私は本当に何も知らなかったんだ。
この後、まさかあんな事態になるなんて、、、。