銀色ハウスメイト




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「あっっっつ……」





会場まで、あと10分ほど。

隣を歩く桜井くんの表情は、珍しく崩れていた。





「確かに暑いですけど…。でも、屋台にはかき氷とかジュースとか、冷たい物いっぱいありますよ!」





照りつける太陽は夕方だというのにまだまだ活動中。


わたしと桜井くんは日中に外出するのを好まないインドア派なので、久しぶりに浴びる日光には弱いみたい。



かき氷にジュースにアイスに…。



気を紛らわすため、冷たいものを思い浮かべれば、幾分か涼しくなった気がする。




……まあ、暑いことには変わらないのだけれど。



白色のカーディガンの袖を、ほんの少しだけまくった。




あんなに目立っていた痣も、今ではほとんど消えかかっている。


けれど、やっぱり所々赤紫な手を出すことにはまだ抵抗があった。




このカーディガンがいちばん待ってる中でいちばん薄いなんだけどなあ。


こればっかりは仕方ない。