……熱くない。 心臓の音が激しく鳴っているけれど、わたしの手は熱くなかった。 それもそのはず。 シチューがかかったのは桜井くんの手だった。 「さ、桜井くんっ」 目の前の桜井くんの顔は、きっと痛さで歪んでいる。 「あー……、大丈夫だから」 「っちょっと見せてください…!」 桜井くんから離れて、後ろに回されていたか手を掴む。 その際に見た、鍋はキッチン台の上に倒れていた。 確かに桜井くんの手には少ししかかかってなかったけれど、火傷したことには変わりない。