右隣______桜井くんがいる方向に顔を向けると、伸びてくる桜井くんの手があった。
その手はわたしの頬に触れて、親指で目元に触れてくる。
…… あったかい。
何度か思ったことがあるけど、ほんとになんでこんなにポカポカ温かい手なの?
おかげでわたしは、目元に力をいれて我慢することになる。
「 …… 泣いた?」
「泣いてないです。」
せっかく人が隠してるのに …… 。
きっとわたしの瞳は潤んでて、分かってるはず。
瞳から涙が零れそうになった理由は、“ お客様の手を店員が叩いたこと ” じゃない。
そりゃ忘れられないし、
しばらくはトラウマになってしまうだろうけど、
そうじゃなくて。
誰も知らないわたしだけが知ってる理由は、桜井くんが来てくれて、“ 安心 ” したからだ。
分からない。けれど、そう思うの。

