……桜井くんは、見てるかな。 今日は嫌がる桜井くんを、わたしのわがままを通して連れてきた。 あの日、花火大会の看板を見てどうしても桜井くんとここに来たいって心の底から思ったから。 「……見たかった…」 ──────桜井くんと。 わたしの声は、おぶってくれている由利くんでも拾えないほど小さなもの。 無かったも同然の声は、わたしの本音。 前を見れば、花火に照らされる由利くんの横顔がある。 少しだけ滲んだ視界を拭って、わたしはもう一度、夜空に上がる花火を目に焼き付けたのだった。