人魚の標本




「足が?」

『そうなの、見間違いかもしれないけどなんか怖くて……』

「本当に寝てたにしてもなんか気持ち悪いな」


 着信があったと画面を見れば、相手は朱里で話を聞けば機嫌も声色もどん底ですって感じだった。

 風呂場で、ヒレ? 魚の?

 昼間の一件から過敏になってるだけだとしても、もしそう見えてるならまあまあ問題だ。

 それに、先生のあの表情も気になるし。


「対策、っていってもなあ……とりあえず、用がなければ水場に近づかないほうがいい」

『そうする。なんかお風呂も怖くなっちゃった』


 夏だからそうもいかないけど! と無理やり笑って朱里は言った。

 もう一回理科室に行ってみたほうがいいかもしれないな。