人魚の標本


「ご、ごめんねお母さん、ちょっとうとうとして……夢かも!」

「やだあ、溺れないでよ。お風呂で寝ると死んじゃうんだからね」

「うん、ごめんね」


 昼のことといい、今といい、あれは本当に見間違いなの?

 どうしてこんな気持ち悪いものが見えるんだろう?


「そうだ、海斗…海斗に電話しよう」


 さっさとお風呂なんてあがってしまおう。

 こんな水がたくさんあるところにいつまでも居たくない。

 そう思って勢いよくシャワーコックをひねった。


 ちゃぷん。


 湯舟は私が乱暴に動いたせいで大きく波打っていた。