「ねえ、恵比寿(えびす)先生はなんで理科の先生になったの?」


 海沿いの町の海沿いの公立高校が私たちの学び舎だ。

 潮風が気持ちのいいこの町を守るように生えた松林ももう見慣れたもので

 ちょっとどころじゃなく不便な田舎には違いないけど私はこの町がとっても好きだ。


「ぼくはねえ、昔は勉強なんてすーっごく嫌いだったんだけどどうしてか理科だけはやたら成績が良くて」

「先生も勉強嫌いだったんですか?」

「そりゃそうですよ、君らもそうでしょ?」


 たしかにー、と笑うあやめと真智。勉強は、まあ、たしかに好きな科目でもなきゃあんまりやりたくない。

 テストの前に慌ててノートのラクガキを消したことも、1回2回じゃない。