水魚の交わり すいぎょのまじわり

走り出そうとした時

後ろから声が聞こえた


「待って!」

振り返ったら
さっき保健室にいた人がいた


「傘、ないの?」

私は黙って頷いた


「オレの貸してあげる!
待って…」


傘立てから自分の傘を持ってきて貸してくれた


「…でも…そしたら…」


「オレは、雨は平気だから…
濡れても大丈夫」


「でも…」


今日初めて会った人に傘を借りて
その人が濡れてしまうって
気が引けた


「じゃあ、オレも帰るから
一緒に帰ろうよ
家どっち?」


「え…」


「電車?バス?」


「バス…」


「じゃあ、バス停まで行こう」

そう言って傘をさしてくれた


「ありがとう…」

私はその中に入った



黒い大きい傘

大きい手

広い肩幅