初恋前夜


 …………。

 びっくりしすぎて一穂の言葉がリフレインしまくった。
 え……? いま、なんて?
「ゆずき?」
 幻聴か?
「コウ、屋上から下りてきたとこなんでしょ。ゆずき、わたしより先にコウのこと呼びに行ったんだよ?」
 一穂の口からゆずきの名前が出た。
 僕の空想の産物である”ゆずき”を、彼女が認識しているって……?
「もしかして、ケンカとかした?」
 一穂が眉を寄せる。なぜか僕のことを心配するように。
「まさか」
「じゃあ、ゆずき、上?」