初恋前夜

 なんて温かいんだろう。これはやっぱり夢じゃない。
「そっちこそ、どうしたの」
 スウェット姿ってことは、いまは新作舞台の稽古中のはず。
「だって、コウがなかなか戻ってこないから」
 コウ――。名字じゃなくて、下の名前で呼ばれた。
「僕? え、戻る?」
 ちょっと何を言ってるのかわからない。
「戻るって?」
「書いた本人が抜けたらブタカンや演出陣だって困るでしょ」
 一穂が口を尖らせる。
「書いた本人? どういうこと?」
「ちょっと、からかってるの? 怒るよ。コウが書いた今度の話、すっごい面白いから、みんなやる気になってるんだよ!」
「……」
 急に押し寄せてきた情報量に狼狽えた。