初恋前夜


 全身打撲は確定だが、幸い捻挫や骨折は免れたようだった。
 しばらくのびていた廊下でのそのそと上半身を起こす。
 あっと思い出してポケットからスマホを取り出した。
 よかった、画面に傷はなさそうだ。ああ、そういえば……。
 先ほど検索した映画の中で、いまが夢なのか現実なのかを知るためのアイテムが登場していた。僕にとってそれはスマホだろう。
 執筆エディタを起動してみる。
 ずらりと文章が表示された。昨夜書いたパートまでだ。
 アプリを閉じ、次にニュースサイトを見た。株価、天気、芸能と、どれも最新ニュースだ。これはさすがに夢じゃない。
 そうなんだ。夢じゃない。
 夢じゃない――。
 そうなると、なんなんだ?
 考えられるのは……、
 ――僕の妄想。