もちろん僕は彼女のすべてに魅かれているのだけれど、もっともスペシャリティを感じるのは――と問われれば、それはもう、迷いなく即答できる。
僕はゆずきの声が好きだ。
彼女の声音は、とてもあたたかい。それに、羽毛のようにやわらかくて、春風のように心地よくて。耳に届くたびに癒される。
そもそも見た目や服装っていうのはすぐに取り繕うことができるかもしれないけど、でも声だけはそうはいかない。
喜怒哀楽を露わにするときはもちろん、ただ文章を読み上げるだけだって、声はそのひとの人柄や性格だったり心だったりを表すものだと思うから。
僕とゆずきはいま、演劇部のメンバーたちが集まっている高架下からずいぶん離れたところにいる。大声で叫んでやっと届くかどうかというくらいの距離だ。みんなは僕たちに気づいていないだろう。
だからもういっそうのこと、この場でゆずきを抱きしめてしまいたかった。
彼女は、僕がそんな衝動に駆られていたことを知ってか知らずにか、
「とにかく一度食べてみて。焼くと絶品なんだから」
と情熱的な眼差しで訴えた。
僕はゆずきの声が好きだ。
彼女の声音は、とてもあたたかい。それに、羽毛のようにやわらかくて、春風のように心地よくて。耳に届くたびに癒される。
そもそも見た目や服装っていうのはすぐに取り繕うことができるかもしれないけど、でも声だけはそうはいかない。
喜怒哀楽を露わにするときはもちろん、ただ文章を読み上げるだけだって、声はそのひとの人柄や性格だったり心だったりを表すものだと思うから。
僕とゆずきはいま、演劇部のメンバーたちが集まっている高架下からずいぶん離れたところにいる。大声で叫んでやっと届くかどうかというくらいの距離だ。みんなは僕たちに気づいていないだろう。
だからもういっそうのこと、この場でゆずきを抱きしめてしまいたかった。
彼女は、僕がそんな衝動に駆られていたことを知ってか知らずにか、
「とにかく一度食べてみて。焼くと絶品なんだから」
と情熱的な眼差しで訴えた。
