初恋前夜

 本心のため息が漏れ出た。
 だめだ。黙っていても才能を評価された後輩――彼を羨む下劣な気持ちがむくむくと膨らんでくる。
 お猪口にも満たない、なんて器が小さい人間だ!
 もういっそうのこと、世の中で素敵な大道具を手掛けている美術のプロの方々に「ざけんなよ、セット舐めんな!」って罵倒されちまえ!
 毒吐く自分を蔑む自分。
 なんともいびつな、僕なりの情緒の保ち方なんだろう。

 放課後。
 僕はひとり、校舎の屋上で作業していた。
 グラウンドからは運動部の掛け声、音楽室からは吹奏楽部の奏でる演奏が聞こえた。
 部室は稽古場として使われ、体育館内の倉庫に作業スペースはない。
 そこで屋上を選んだわけだ。