「「あっ」」
 僕と彼女の声が重なった。
 子猫の体は弧を描いて僕に迫り、伸ばしていた腕をひと蹴りしてから肩に飛びついた。
「おおっ」
 バランスを崩しそうになった僕は、なんとかサドルの上で体勢を整えた。そのままゆっくりと身をかがめる。最後は彼女が、僕の肩に乗った子猫を手に取った。
 女の子に抱き寄せられた猫はおとなしく丸まっている。
 彼女は大切なものを愛でるようにまつげを伏せた。
「ほんと、よかったぁ」
 その表情に、僕の胸がトクンと跳ねた。
 なんて穏やかであどけない顔をするんだろう。
 女の子は何度か子猫を撫でてから、身をかがめて地面に下ろした。
 子猫は「ミャァ」と鳴いてから神社の敷地へと駆けていった。
「もう下りれない高さまで登るんじゃないぞー」
 笑いながら叫ぶ僕に、腰を上げた彼女が深々とお辞儀した。