子猫は犬に追いかけられたり車に驚いて登ってしまったりということもあるらしい。
「助けよう」
「えっ。どうやって」
 僕は自分の自転車を引いて子猫の登った木の下に移動する。
 そしてスタンドを立てると、よっ、と勢いをつけてサドルの上に片足立ちした。
 幹に片手を当てたままバランスを保ち、もう一方の腕を子猫へと伸ばす。
 子猫はゆっくりと腰を上げた。どうしようか、迷っているようだ。
「ほら、こっち」
 僕は手のひらを上に広げて差し出す。
「あとちょっと。がんばれっ」
 下から彼女の声がした。
 子猫に声援を送っているのか、もしかして僕に?
「さあ、来い」
 限界まで手を伸ばしたとき、子猫が枝からジャンプした。