初恋前夜

 ここは素直に現実を受け入れよう。
 僕は敗れた。
 そうだ。
 そうなんだ。
 でもね、
 そう、――でも。
 ひとりは僕の作品のほうが優れているとジャッジしたのも事実であり現実だ。
 誰が誰に入れたかが発表される予定はないものの……。
 もしも、そのひとりが一穂だったら?
 審査員の中で紅一点。部内でもひと際存在感を放ち、次回作でも当然ヒロイン候補の彼女だけは僕の脚本を選んでいたら?
 それはもう、僕にとっては百万票に等しい。
 今回見る目のなかった顧問や先輩たちのことも赦し、採用された一年生を称えようじゃないか。
 審査員か誰か、僕に投じられた一票について『におわせ』でもコメントしていないか気になり、そのままスクロールし続けていった。