「俺もみんなも同じだよ。理想を描いて生きてるのは」
 楓はスマホを持ったまま僕の前をスタスタと通り過ぎ、倉庫の扉まで行った。
 扉を開くと、そこで振り返り、思い出したように付け足した。
「ああ……。あと、あれだ。『石の上にも三年』」
 言葉だけ置いて扉が閉まる。
 石の上にも三年。
 さっき慰めのつもりでかけてきたとんちんかんなことわざの続きか?
 たしかに今度のは良さげだ。つらくても辛抱して続ければ、いつかは成し遂げられるという意味だろうし。
 ……でもなあ。
 三年も経ったら高校卒業しちゃうんだよな。