初恋前夜

 目の前で検索した言葉を慰めに使う気か。しかもそのことわざ、黄河の濁りは百年経っても消えないっていう、いつまで待っても実現する見込みがないことのたとえだろーが!
「なんか違うような」
 そう言って楓がヘラヘラ笑った。
「全然違うわ! つーかひとの傷口に塩塗り込んで楽しいか」
「やっぱ傷心なんだ」
 楓に全部知られているとあらば、もう取り繕って平然と構えているふりをする必要もない。ダム、決壊。
「みんな心で思ってるよ。三回落ちて後輩にも負けた恥さらって」
「すげー自虐。病みまくってるな」
 こいつ、もう慰めを放棄しやがった。
「でもさ、そこがコウらしいって」
「そこがってどこがだよ」
「おまえ、演劇部入るって決めたときなんて言ったか覚えてる?」