楓はバスケに対してだけはバカがつくほどストイックだ。修行僧かなにかのようにひたすらボールばかり追いかけている。練習試合なんかで女子たちにキャーキャー騒がれても、それで鼻の下を伸ばすことがない。
ただ、それが妄想女子たちにクールな楓像として映り、さらに人気を博すという好循環。楓はそういう点では器用でソツがないのかもしれない。口数が少ないくせに、クラスでは憎たらしいくらいに人当たりがよく、物腰柔らかだと思われている。実際には喜怒哀楽が一部欠損しているだけなのに。
「コウも徳を積め」
楓が仰々しく言った。
徳を積め、ときたか。
もう十年来の、互いに気心の知れた男。アドバイスも深いじゃないか。
「そだな」
まあ楓の積んできた徳は十分にわかる。
生まれながらにハードルの高い名前を授けられたら、僕なら確実にグレてただろう。もしも非モテ体型だったらさらに最悪の末路をたどっていたかもしれない。
しかも、楓――。
ただ、それが妄想女子たちにクールな楓像として映り、さらに人気を博すという好循環。楓はそういう点では器用でソツがないのかもしれない。口数が少ないくせに、クラスでは憎たらしいくらいに人当たりがよく、物腰柔らかだと思われている。実際には喜怒哀楽が一部欠損しているだけなのに。
「コウも徳を積め」
楓が仰々しく言った。
徳を積め、ときたか。
もう十年来の、互いに気心の知れた男。アドバイスも深いじゃないか。
「そだな」
まあ楓の積んできた徳は十分にわかる。
生まれながらにハードルの高い名前を授けられたら、僕なら確実にグレてただろう。もしも非モテ体型だったらさらに最悪の末路をたどっていたかもしれない。
しかも、楓――。
