彼は前回の舞台で小道具として使ったソファに胡坐をかいている。いきなり現れた僕を見ても、たいして驚く様子はない。
「いや、そっちこそなに。サボり?」
 胸中を悟られたくなくて、質問に質問で返す。
 はめ殺しの窓から差し込む光で、倉庫の中は電気なしでも意外と明るかった。
「んいや、ちょっと休憩」
 楓は手元でスマホを操作しながら答えた。
 白を基調としたバッシュに、赤のビブス。背番号7。
 僕はバスケにはあまり明るくないが、たしか漫画なんかで『7』をつけてるやつにはエースが多かった気がする。
「プレーのチェックがてら撮影して、その編集中」
「ああ、あれか」
「なんかいま、侮蔑的なニュアンス込めた?」
「どこに」
「あれ、って言い方」