「ねーコウくん、マシュマロ食べる?」
僕の目の前にゆずきがひょこっと顔を出す。
「わっ! びっくりしたー」
あとでこっそり呼び出そうと思っていた相手からいきなり声を掛けられたものだから、心の内で盛大に焦った。
青々と茂る山々の間を蛇行している一級河川の支流。
その下流にかかる高架下の河原。
高校の演劇部員総勢二十名ほどで、先週行った新作公演の打ち上げを兼ねたバーベキュー。
さっきまでみんなで持ち寄った肉やら野菜やらをワイワイ言いながら焼いていて、それでいまはちょうど、鉄板の上もおおかた片付いて、それぞれにくつろいでまったりしているところだった。
僕はふらりと川辺を歩き出して、高架下から離れた。
一度頭をクリアにして、このあとどうしようか――具体的には、現地解散するときにどうやってゆずきを呼び止めようか思案していたのだ。
