初恋前夜

 ストライプシャツを着たゆずきは、下は七分丈の、黒のスキニーパンツを履いている。細くすらりと伸びる足がいっそうきれいに見えた。
「わあ、冷たーい」
 足先をゆっくりと水面に浸した彼女から笑みがこぼれる。
「でも気持ちぃー」
 そしてよろよろしながら一歩ずつ進んでいった。
 僕もあとに続く。水の中にはわりと大きな石も転がっていて、表面には藻が生えているのか少しぬめぬめした。足の裏で探りながら力のかけられるポイントを見つけ、 少しずつ前へ。
 ふと顔を上げる。
 慎重な僕に対してゆずきは、すでに流れの真ん中あたりまで来ていた。
 ゆったり流れる川のせせらぎに射す太陽光は、細かく砕けてチラチラと散る。
 輝く水面に包まれた彼女は腕を開いて指先を伸ばし、からだを反転させた。
 まるで、水の上で踊るように。
 背中まである彼女の髪が風に吹かれて揺れ、日に透けてきらめいた。