その日は、家に帰りついてからも、パピコ先生のことが頭から離れることはなかった。
 この感覚は何なのだろう。映画を見終わったときのような、ふわふわした感じ……

 微熱にでも浮かされているのか。その日は、早めに床に就いた。
 目を閉じる。マブタによみがえる眩しい光景。

 水着姿のパピコ先生がいた。ひざまずき、オレのパンツのヒモを解いてくれている。先生の顔の位置が近い。近すぎる…… きっと匂われている。
 先生の首すじからは、花のような香りが漂ってきた。

「オレ、恥ずかしいです……」

 クリンとした上目づかいでオレを見る先生。口元が微笑んでいた。聞こえてくる息づかい……

 この情景、なんか見たことあるぞ…… 思い出した。クラスの男子で回し読みしたエロ本。そこで見た光景だった。

「先生、好きです。付き合ってください」
 そんな告白をしても、中坊のオレなんかに取り合ってはくれないだろう。そんなこと、百も承知だ。
 今はこの妄想劇場だけで十分だった。

 まとめた髪からヘアピンを抜く先生。天を仰ぎながら頭を振り、髪を解く。ふわりとした毛先が、オレの腹部をくすぐった。
 ビクン。オレの躰の一部が熱く、そして固くなってゆく。

 先生のピンを抜く仕草。それがフラッシュバックする。
 オレも、ピンピンになったオレ自身を…… 抜いた。

 思春期だから。夏だから……