「早苗。言い辛いんだけど…」

「んっ?何 雅也?言って。」

「あのさ。早苗のこと 川村に話しても いいかな?」


結婚を前提に 一緒に住むことを

お互いの両親に 報告に行き。


どちらの家族も 喜んでくれた。


俺達は 早苗の合格発表を 待たずに

一緒に 生活を 始めた。


「雅也 まだ川村さんと 付き合いがあるの?」

「たまに 電話で話すくらいだけど。川村には ちゃんと話したいんだ。自分から。」

「そうだね。別の人から 川村さんの耳に入るよりは その方がいいよね。」



「俺 川村のことは 友達だと思っているから。川村が 本社にいた時は 随分 助けてもらったし。」

「でも 雅也 イヤじゃないの?私 少しの間でも 川村さんと 付き合っていたんだよ?」

「そりゃ 全然 気にならないわけじゃ ないけど…今の早苗は 俺と一緒にいるから。それに 今 川村が 近くにいるいるわけじゃないし。」

「雅也が イヤじゃなければ。私は 別に 川村さんに 言っても 構わないよ。」

「ありがとう。そのうち 電話してみるよ。」


今も 川村は 地方の支店で 頑張っている。

忘れた頃に 川村からは 電話が入り

俺の心を ほころばせていたから。


「俺 川村に 怒られるかなぁ。まあ それはそれで いいけどね。」

「うん…でも 私。川村さんには 悪いことしてしまったから。ちょっと 気まずいの。」


「俺も。あの時 俺が先に 早苗を好きだって言っていたら 違っていたのかな?俺達。」

「どうかな…私 加藤さんのことも 気になってたから。一緒に働いていたら やっぱり 雅也の気持ちには 応えられなかったかも…」

「早苗って そういう子だよなぁ…だから 俺 早苗がいいんた。」

「えっ?」

「回りとか 気にしないで 自分を優先する子だったら 多分 早苗を 好きにならなかったと思う。」


「フフッ。雅也って そういう人だよね。私達 馬鹿みたいね。」

「ホント。早苗 いなくなって 俺が どれだけ寂しかったか。知らないでしょう?」

「私は 気持ちを 伝えられないのに 雅也の近くにいることが 辛くて 逃げ出したの。」

「俺達 無理し過ぎだよね?」

「うん。でも…だから 雅也のこと 忘れられなかった…」


俺が 真っ直ぐに 早苗を見つめると

早苗は 優しい瞳で 俺に頷いた。