「4時か。さすがに 夕食は早いか?」

俺の言葉に 早苗は 笑顔になる。


早苗が コーヒーを淹れてくれる間に

俺は 会社に 直帰の連絡をした。


キッチンの 小さなテーブルに

向かい合うと お互いに 緊張して。


うまく 言葉が出ないまま 

俺達は 無言で コーヒーを飲んで。


「ねぇ。岩瀬さん。聞いていいかな?」

「はい。」

「あのクリスマスの夜。岩瀬さん どうして 俺を呼んだの?」

「あっ……」

「俺が 川村の友達だから?」

「それも あるけど…」

早苗は 何かを言いたそうに 俯いてしまった。


「俺さ。ずっと 岩瀬さんのこと 好きだった。でも 川村が 先に言ったから。ずっと言い出せなくて。」

俺は 何も考えずに 一気に言う。


早苗は 驚いて 顔を上げると 席を立った。

やっぱり 迷惑だったのか…


俺の心に 負の感情が 込み上げた時

早苗は 奥の部屋から 何かを持ってきて 俺に差し出す。


「岩瀬さん… これ?」

「ずっと 大切にしてました。」

早苗が 俺に見せたのは 

あの夜あげた 赤いブーツだった。