「俺 そこのコンビニにいるから。着替えて来て。」

俺が 早苗のアパートの前で 言うと

「あの… もしよかったら 中で待っててもらえますか?そうしたら スーツも 乾かせるから。」

「えっ?中で待ってても いいの?」

早苗は 少し頬を染めて 頷いた。


川村が あんなに願っても 入れてもらえなかった部屋に

早苗は どうして俺を 入れようとしているのか。


「うーん。でも 岩瀬さん 着替えるのに。いいの?」

憶病な俺は やっぱり躊躇してしまう。

「はい。狭い所ですけど。どうぞ。」

俺は 早苗の声に 頷いて アパートに入った。


早苗の部屋は 俺のアパートと似た

1DKの 間取りで。


部屋の中は 綺麗に整頓されていた。


「着替えてから お茶淹れますね。」

「構わないで。風邪ひくといけないから。早く着替えて。」

早苗は 俺を キッチンの椅子に待たせ

奥の部屋に 着替えに 入っていった。


こんな偶然って 本当にあるんだ…


ずっと会いたかった 早苗に会って。

しかも俺は 今 早苗の部屋にいる。


もう 後悔は したくない… 絶対に。


俺は 早苗を 待ちながら 

告白することを 決意していた。



「すみません。コーヒー淹れますね。」

着替えた早苗が 俺の前に来て。

「ううん。本当に 気にしないで。それより 少し早いけど。食事に行こうよ。」

「でも スーツ 乾かさないと。」

早苗は ハンガーにかけた 俺の背広を指す。

「大丈夫だよ。パッパッと拭くから。気にしないで。」


早苗は 綺麗なタオルで 丁寧に 背広を拭い。

「あの。ハンカチは 洗濯して返します。」

早苗は もう一度 俺に会う 気持ちがある。

それは 俺の胸に 閃光のような 煌めきを与えた。