毎日の仕事に 船田を同行することで

俺は 随分 気が紛れていた。


「寺内さん。さっき 説明してたこと よくわからなかったんですが…」

船田は 取引先を回りながら

細かく 俺に質問をするから。


「ああ。工事の手順について?それは……」

船田に教えることは 復習になって。

俺自身にも いい勉強だった。


「寺内さんって 取引先の 信用が厚いですね。」

船田は スポーツマンらしく 明るい性格で。

俺にも 臆せずに 色々 聞いてくる。


「自分が 信用されることは 会社の信用に 繋がるから。まず 自分を信用してもらうためには 何をすればいいか。考えてみて。」

「商品知識ですか?」

「それは 当たり前のこと。」

「ああ…そうですよね。じゃ 提案力とか?」

「うん。それも 当然 必要になってくるけど。船田君は まず 約束を守ること。」

「えっ?そんなことで いいんですか?」

「そうだよ。簡単なことだろう?でも 全部 きちんと守ることは 意外と難しいんだ。」

「……?」

「今日 これで3社目だろう?1社目で 言われたこと 覚えてるか?」

「えっと…」

「新しいカタログを 送ってくれって 言っていただろう?そういう 小さなことを 全部 大切にすることで 信用を築くんだ。」

「あっ。寺内さん 明日 発送しますって 言ってましたね。」

「小さなことほど 忘れてしまうから。そうすると 相手は ” あいつは口先の返事は 調子いいけど 信用できない ” って 判断されてしまうからね。」


仕事では 毎日 少しづつ 信用を築いても。

俺自身は ちっぽけで 卑屈なままで。


恋にも マニュアルが あればいいのに…