色褪せたままの 生活を 続けながら。

新しい年を迎え 春には 新入社員が来て。


入社4年目に なった俺は 

新入社員の 教育を担当する。


今年 本社配属になった 船田 守は

俺と同じ大学の 出身だった。


「よろしくお願いします。」


当時の俺と 同じような 

緊張した表情で 挨拶をする船田。


「こちらこそ。あまり緊張しなくて 大丈夫だよ。」

「はい。ありがとうございます。」

「船田君 スポーツは 得意?」

「高校まで サッカーをやってました。」

「へぇ。じゃ 負けず嫌いな方?」

「そうですね。でも 強い学校じゃなかったので。試合では 負けてばかりでしたけど。」

船田は 少し 笑顔になって 答えた。


俺も 3年前は こんな風に 初々しくて。

希望と責任に 目を輝かせていたのか。


入社した あの日 早苗に出会って。

俺の日常は 鮮やかな色彩になったのに。


俺は 自分の弱さで 色彩を失った。


「まずは うちで扱う商品を よく覚えてほしい。」

たくさんのカタログを 船田に渡しながら。

もう一度 あの時から やり直せたら

俺は 早苗を 失わずにすむのか。


「はい。わかりました。」

船田の 元気な声に 引き戻されながら


俺の思考は 3年前を さまよっていた。