「そういえば 川村。岩瀬さん 会社 辞めたんだよ。」

「えっ?マジで?」

「川村 聞いてないの?」

「ああ。別れた彼氏に いちいち 言うかよ。」

「まあ そうだけど…報告くらいあっても いいだろう…」

「聞いたところで 俺には 何もできないし。どうして 辞めたんだろう…」

「俺も 詳しくは 知らないけど。噂では 学校に行くって 話しだよ。」

「へえ。早苗って 短大が栄養科だったから。本当は そういう仕事を したかったって 言ってたなぁ。」

「じゃ その関係の学校に 行くのかな。」

「どうだろう。まあ 俺には もう関係ないけどね。」

「そうだな。どうだ 川村。そっちに 彼女できたか?」

「はあ?そんなにすぐ できるかよ。でも こっちの人は みんな親切だよ。」

「川村なら すぐできるだろう。」

「いや。社内の人は もういいよ。今度は 他で探すよ。それより 寺内は どうなんだ?」

「俺? 俺は 相変わらずだよ。彼女とか あんまり欲しくないし。」

「まあ 女に振り回されるより その方が 賢明かもな。」

「よく言うよ。川村は 彼女いないと 元気が出ないくせに。」

「ハハハ。やっぱり 寺内と話すのは 楽しいなぁ。そのうち 東京行くよ。また 飲もうぜ。」

「うん。来いよ。待ってるから。」


川村と話すことは 俺だって 楽しい。

今回の件で 懲りたのか 懲りてないのか。


川村の 明るい声からは 読めないけど。


そう思いながらも 俺は 

川村にさえ 本音を 言えないのだから。


自分を さらけ出さない俺に

早苗が 心を開くはずがない。


失ってみて 大切なことに 気付くほど

俺は まだ幼稚な子供だった。