川村は 4月の人事で 地方の支店に 異動になった。

多分 あの失敗が 原因だった。


「あーあ。俺は レールから外れたのか。」

「そんなことないだろう。期待されている奴こそ 色々な支店を 回るらしいから。」

「いや。このタイミングの異動って。脱落以外 ないだろう。」

「そうかな… でも あれは 大事にならなかったんだし…」


何を言っても 俺の言葉は 

慰めにはならないだろう。


「仕方ない。心機一転 地方で頑張るか。」

入社した時から 川村は 地方は嫌だって 言っていたのに。


でも 俺は 川村の異動を 喜んでいた。


川村が いなくなって ほとぼりが冷めたら

俺は 早苗に 告白しようと思っていた。


同期で 友達だと 言っておきながら。


結局 俺は 自分のことしか 考えていなかった。



そして 早苗のことも…


川村が 仕事でミスをしたことも

それが原因で 地方に異動になったことも


早苗が 責任を感じないわけは なかったのに。


早苗は きっと 自分を責めていた。


川村と 付き合ったことも。

身体を 許さなかったことも。


結局 川村の気持ちに 応えられなくて

最後は 別れを 選んだことも。


早苗なりに 考えた結果だったとしても。


川村を傷付け 追い詰めてしまったことに

早苗は 責任を 感じていたのだろう。


俺は そんな早苗の気持ちを

全く 想像もしていなかった。