俺が就職した会社は 住宅建材を扱う商社。

同期の新入社員は 20名足らずで。

研修後は 関東圏の支店に 振り分けられる。


実家が東海地方で 大学から 1人暮らしの俺は 

どこに配属されても 構わないと思っていた。


「あーあ。俺 地方の支店は 嫌だなぁ。」

1ヵ月の研修で 親しくなった仲間達。

俺は 川村 洋介と 気が合って よく話した。


「そうか?俺は どこでも 構わないけど?」

川村の言葉に 俺が 笑顔で答えると

「寺内は 地方出身だからなぁ。俺 ずっと 東京だから 地方では 暮らせないよ。」

川村は 揶揄うような笑顔を 俺に向けた。

「悪かったね。俺は 田舎者で。」

川村の 憎めない笑顔に 俺は苦笑する。


「ヘヘッ。でも 寺内って 1人暮らしだろ?羨ましいよ。俺 ずっと実家だから。」

「大変だよ 1人暮らしって。」

「そうか?いつでも 彼女 呼べるじゃん?」

「ハハハ。川村も 1人暮らしすればいい。就職したんだからさぁ。」

「そうなんだけど。いざとなると 面倒でさ。彼女できたら 実家出て 同棲するか。」


川村は 陽気で 人懐っこくて。

時々 不躾なところも どこか 憎めなくて。


川村も 俺のどこが 気に入ったのか。


研修が終わる頃には 

俺達は かなり親しくなっていた。