泥酔した川村は 店を出る頃には

1人で立てないほどの 状態で。


「岩瀬さん。川村の家 知ってる?」

俺は早苗と 川村の両脇を 支えながら聞く。

「ううん。練馬区って聞いたけど。行ったことないから。」

「仕方ないなぁ。今日は 俺の部屋に 連れて行くか。」

「寺内さん いいんですか?」

「岩瀬さんの部屋に 泊める訳には いかないでしょう。」

「すみません…」

「岩瀬さんが 謝ることじゃないよ。それより 1人で帰れる?」

「はい。私は 大丈夫です。」

「家 どこ?」

「笹塚です。まだ 電車あるし。そんなに 遠くないので。」

「笹塚?俺 池尻大橋だから。一緒に タクシーに乗りなよ。俺達 途中で降りるけど。そのまま 家まで 乗って行けるから。」

「いいんですか?」

「もちろん。」


グニャグニャの 川村を 支えて

3人で タクシーに乗った。


「岩瀬さんって 出身は どこなの?」

「三重です。」

「じゃ 大学から 東京?」

「はい。寺内さんは どちらですか?」

「俺は 浜松。行ったことある?」

「いいえ。実家に帰る時 通るけど。寄ったことは ないですねぇ。」

「そうだよね… 用がなければ 来ないよね。」


眠っている川村を 真ん中に 挟んで。

俺と早苗は ポツポツと 話した。


こんな状況でも 早苗と話すことが 嬉しくて。

俺は 永遠に 家に着かないことを 望んでいた。